第3章
「東都中央広場の式典が終わるまでは、人前に出ないでちょうだい」と母は言った。「建築士としての表立った行動は控えること。業界のイベントも、インタビューも一切禁止よ。理奈がこれを乗り切るまでの辛抱だから。あなたは姉なんだから、大人になりなさい」
私は頷いた。
母は私の額にそっとキスをして、部屋を出て行った。
私はポケットから彼女のリストを取り出し、もう一度目を通してから、簡易ベッドの枕の下に滑り込ませた。
地下室は、いかにも地下室らしい容赦のなさだった。三日目には湿気のせいで縫合跡が炎症を起こし、微熱が引かなくなっていた。寝返りを打つたびに、右脇腹がズキズキと痛んだ。
階上では、夜遅くまで明かりが点いていた。四日目の夜、階段を下りてくる父の声が聞こえた。
「理奈。この指名こそ、我が家が求めていたものだ。あのファサードのアイデア、お前の直感は素晴らしかった」
笑い声。圭太が何か言ったが、聞き取れなかった。グラスの触れ合う音がした。
あのファサードのアイデアは私のものだ。四回も図面を引き直した。最終版を仕上げたのは午前二時だった。
私はスマートフォンを取り出し、左の親指で文字を打ち込んだ。
「式典まであと三日。終わる前にここを出たい。どこにも痕跡を残さずに」
一分も経たないうちに、宗介から返信があった。
「了解。建物に人員を配置する。他には?」
だからこそ、私はこれまで四回も彼の申し出を断ってきたのだ。彼は決して「本気か」とは聞かない。ただ「他には?」とだけ尋ねる。
すでに眠りに落ちていた私は、脇腹の痛みで再び目を覚ました。時刻は午前二時過ぎ。ナイトテーブルに水はない。誰も置いてなどくれなかったからだ。
私は一段ずつ、ゆっくりと階段を上った。
理奈の部屋のドアの下から、一筋の光が漏れていた。そのまま通り過ぎるつもりだった。だが、話し声に足が止まった。
最初は理奈の声。低く、甘ったれたような声だ。
「式典まであと三日よ。それが終わった後も、どうしてあの人がまだここにいるわけ?」
圭太はすぐには答えなかった。
「移植チームの話では、君の体はまだ適合中らしいんだ。もし拒絶反応が出たら、輸血が必要になる。それで彼女の血液型がちょうど合うんだ」
「拒絶反応なんて出ないわ」
「それはまだ分からないよ」少しの間。「それに、もし何か問題が起きたとしても――彼女にはもう一つ残っているからね」
沈黙。そして、小さく冷たい笑い声。
「じゃあ、予備みたいに、あの人を地下に閉じ込めておくってわけね」
「式典が終わったら、離婚届にサインさせるつもりだ。守秘義務条項をつけて、財産分与もする。彼女は同意するよ」
「ずいぶんと自信たっぷりなのね」
一拍。
「彼女は俺を愛しているからね」彼の声は平坦だった。退屈しているとさえ言える。「それが厄介なところでもあり、保険でもあるんだ」
シーツの擦れる音がした。理奈の声が低くなり、彼に近づく。
「本当に私のこと、大切に思ってくれてる? 心から?」
彼の声色が変わった。温かく、低い声。かつては私だけのものだと思っていた声。
「ずっと君だけだ。彼女と過ごす時間は一分一秒でさえ、君の元へ戻るためのカウントダウンに過ぎないよ」
そして彼女の笑い声――柔らかく、満ち足りた声――が消えると、決して静寂とは呼べない生々しい沈黙が落ちた。
私は地下室へと戻った。
枕の下からリストを取り出し、半分に折り、さらに半分に折って、また元の場所に戻した。
窓の外に薄灰色の線が浮かび上がるまで、私は簡易ベッドの端に座り続けていた。
七時を少し回った頃、圭太が下りてきた。床に座り込む私を見て、彼は入り口で立ち止まった。
「いつ起きたんだ?」
「たった今」私は壁に手をついて立ち上がった。
「もっと寝ていた方がいいよ、琴音」
「今日は理奈を東都中央広場の現場に連れて行くの?」
彼の瞳の奥で何かが動いた。一瞬の揺らぎ、そしてすぐに消え去る。
「式典の前に、一度見て回りたいって言うからね」
「そう。いってらっしゃい」
二日後、家には誰もいなくなった。四人が出て行き、玄関のドアが閉まる音がした。大型車が家の前を走り去っていく音が聞こえた。
私はスマートフォンを手に取り、一言だけ送信した。
「今」
宗介の車は、すでに区画の端に待機していた。
それだけだ。私は家を後にした。
その後の出来事は、約五百キロ離れた場所からライブ配信で眺めた。
理奈は、圭太が海外から取り寄せたオーダーメイドのドレスを身に纏い、ステージに上がった。両親は最前列に立っていた。圭太は演台の彼女の傍らに立ち、その腰にそっと手を添えている。まるで雑誌の表紙のような完璧な光景だった。
彼女はマイクに向かって身を乗り出した。
「家族に、そして圭太さんに感謝します――あなたが、後世に残るものを創り出す勇気を私にくれました――」
彼女の言葉が止まった。
顔から血の気が引いていく。
彼女の手が腹部を押さえた。横へ一歩よろめき、口から吐き出した大量の血が、彼女の名が刻まれたトロフィーを赤く染め上げた。
会場は、私がこれまで聞いたこともないような異様なざわめきに包まれた。
一人の先生が最前列を掻き分けて飛び出し、輸血が必要だと叫んだ。「特殊な血液型だ、今すぐドナーを呼べ……このままでは今夜を越えられない」
父が圭太の胸ぐらを掴んだ。
「電話しろ。今すぐあの恩知らずの小娘に電話をかけろ!」
圭太はすでにダイヤルを回していた。
「琴音。頼む、出てくれ。琴音――」
彼は耳からスマートフォンを離した。画面を見つめる。もう一度かける。画面を見つめる。またかける。
「どうした!」父が苛立たしげに声を荒らげた。「何があった!」
「番号が、使われていない……」
