第6章
浅村財団の最上階、役員会議室。
重厚な扉が――ドン、と乱暴に押し開けられた。
私はテーブル最奥の黒革の回転椅子に、ゆったりと腰を沈めたまま背を向けている。指先で、手首のオーダーメイドのパテック・フィリップの縁を、気のない仕草でなぞった。
「北野さん。あなたの時間厳守は、想像以上に最悪ね」
振り返りすらしない。声だけを、氷みたいに落とした。
「……誠に申し訳ございません。外の債権者が、もう制御不能で……。浅村社長、私は北野達彦です。もし北野グループに対する悪質な空売りを止めていただけるなら、お好きな額を……」
達彦――かつて東京の上流で、傲慢ささえ美徳のように振る舞ってい...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
縮小
拡大
