第9章

 分厚い白い霜が、巨大な床まで届く窓一面を覆っていた。私は裸足のまま暖かなカシミヤのラグに立ち、ボルドーの赤を半分ほど残したグラスを手に、どこか他人事みたいな顔で外を眺める。

 ロンドンは、ここ十年でもっとも酷い吹雪に見舞われていた。膝まで積もった雪の中、凍てつく寒さに身体を削られながら、ひとりの男が手足を使って本館へ這い寄ってくる。動きは異様に遅い。まるで捨て犬だ。

 達彦。

 正面玄関から屋敷まで、たった300ヤード。その白い雪面に、泥で汚れた筋をべったり引きずっていた。

 影山が前へ出て、私の半歩うしろに止まる。

「お嬢様。体温が致死域まで落ちています。以前折れた肋骨も、まだ...

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