第2章
カエルはシルバームーンの戦士たちを引き連れ、入り口に姿を現した。
部屋にいたすべての狼たちが、一斉に視線を落とす。
あれほどの殺気を放っていても、彼は相変わらず腹立たしいほど美しかった。長身で、彫刻のように整った顔立ち。冷酷なまでの洗練。ただそこに立っているだけで、周囲の男たちが安物の偽物に見えてしまうような男だ。
不運なことに、かつてはそれがまさに私の好みのタイプだった。
彼の瞳が私を捉え、顔を滑るように見つめた後、若き戦士の裸の胸に置かれた私の手へと視線を落とした。
彼の指が曲がり、爪が鋭く伸びる。そして、私に向かって歩み寄ってきた。
彼の放つ圧倒的なアルファの覇気に当てられ、思考よりも先に体が反応し――私は慌てて手を引っ込めた。
カエルはその若者を見ようともせず、平坦な声で言った。
「出て行け」
狼たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
私も彼らに混じり、出口に向かって踵を返した。
だが、一歩踏み出した瞬間、腰に腕が回され、強引に引き戻された。
「誰がこんな場所に来ていいと言った?」カエルの声は低く、ドスが効いていた。
私は彼の視線を真っ向から受け止めた。
「私がどこへ行くにも、あなたの許可が必要になったのはいつから?」
彼の瞳がさらに冷たさを増す。
彼は反論しなかった。ただ身をかがめると、私の腰を担ぎ上げ、背中を叩く私の拳を完全に無視して外へと運び出した。そして、待機していたSUVに私を押し込み、自らも隣に乗り込んできた。
カチリと、ドアのロックが下りる。
狭い車内で、彼のアルファとしてのオーラが私をその場に縫い付けた。
「楽しかったか?」彼が問う。
「あんな掃き溜めで、他の狼の匂いをベタベタと体に染み込ませて」
「あなたの領地で出るどんな酒より美味しかったわ」私は言い返した。
「景色もね」
「契約書に明記されているはずだ」と彼は言う。
「俺の婚約者として、裏社会の群れと密会することは許されない。他のオスに触れることもな。己の娯楽のために掟を破るなど言語道断だ」
「あんな馬鹿げた掟なんて、何年も前に燃やしておくべきだったのよ」
「その『馬鹿げた掟』により、お前は月の泉で一日過ごすことになる」彼は淡々と返した。
「身を清め、隔離され、そこで反省しろ」
「行かないわ」私は言った。
「どうしてあなたの命令を聞かなきゃいけないの?」
彼はピタリと動きを止めた。
「……もう一度言ってみろ」
「私はあなたの『番』じゃない」私ははっきりと告げた。
「あなたの古臭い掟なんて、私には適用されないわ」
車内が死んだように静まり返る。
彼の瞳孔が収縮し、冷静さの仮面がわずかにひび割れ、その下に隠された本性が覗いた。
その瞬間、私はハッとした――やりすぎた。
このまま彼を煽り続け、彼がマーカスの元へ直行して契約を確認でもしたら、私がようやく取り戻したムーンライト領が水の泡になってしまうかもしれない。
今はまだ、ちゃぶ台をひっくり返す時ではない。
私は強張った顎の力を無理やり抜いた。
「つまりね、私のこの性格じゃ、あの泉に百回沈められたところで、あなたの従順な『ルナ』になんてなれないってことよ」
彼は長い間、私をじっと見つめていた。
「気に入る必要はない。だが従え。掟は絶対だ」
「なら、ずっと待ってれば?」私はそう吐き捨て、窓の外へと顔を向けた。
SUVは領地に入り、ゆっくりと停車した。
「アルファ・カエル」ドアが開くと同時に、セラフィナの柔らかな声が漂ってきた。
彼女は控えめな淡い色のドレスを着て階段に立っていた。髪はきちんとまとめられ、指には祈りの数珠が掛けられている。まさに優しく献身的な女性を絵に描いたような姿だ。
「ちょうど満月の祈りを終えたところです」彼女は言った。
「月の女神様に、姉の罪をお許しくださるようお願いいたしましたわ」
カエルは彼女を一瞥し、それから私を見た。
「同じマーカスの娘だというのに」彼は冷ややかに言った。
「お前は彼女の礼儀作法の欠片も学んでいないようだな」
前世の私なら、その言葉に心をえぐられていただろう。
しかし今回は、思わず笑みがこぼれそうになった。
「だったら、彼女をルナにすればいいじゃない」私は言った。
「明日は長老たちの宴があるんでしょう? セラフィナを連れて行けばいいわ。彼女の方が、私なんかよりずっとあなたの理想の条件にぴったりだもの」
二人は同時に凍りついた。
「俺が選んだルナはお前だ」彼はゆっくりと口を開いた。
「お前が癇癪を起こしたからといって、それが変わることはない。明日も出席しろ。それがお前の義務だ」
そう。義務。決して選択ではない。
「私に出席してほしいなら、いいわよ」私は言った。
「でも、また私があなたに恥をかかせたとしても、それはあなたの責任だから」
セラフィナが滑らかに割って入ってきた。
「レイヴンはきっと、正式な場に慣れていないだけなのです。アルファ、もしお許しいただけるなら、明日は私も同行いたしましょうか? 彼女が作法を忘れた時には、私がそっと教えますから」
彼が答える前に、私は口を挟んだ。
「私としては大歓迎よ」
「お前には聞いていない」彼が鋭く言い放つ。
「でも、それが一番手っ取り早いでしょ?」私は言った。
「あなたは完璧な礼儀作法が保たれて満足。彼女はいい子を演じられて満足。私は生きたルールブックが手に入って満足。誰も損しないじゃない」
彼は私の視線を真っ向から受け止めた後、「二人ともだ。明日、六時」と言い残し、歩き去っていった。
彼の足音が遠ざかるや否や、セラフィナの顔から甘い表情がすっと消え失せた。
彼女は私の手首を掴み、爪を食い込ませてきた。
「どうして私に婚姻の契約書を渡したの?」彼女は声を殺して凄んだ。
「一体、何を企んでいるのよ?」
