第5章

絵里視点

家に戻る途中、バッグの中のブレーキラインレンチがずしりと重かった。だが、何かが私をガレージのドアの前で立ち止まらせた。

(待って)美佳の声が、私の足を縫い留めた。(まだ何かあるかもしれない。あいつが一つ隠したなら、他にも……)

家の方を振り返る。和也は今頃「大事な電話」とやらのために腰を落ち着けている頃だろう。ちゃんと調べるなら、これが唯一のチャンスかもしれない。

私は再びガレージに滑り込み、あの古い赤い工具箱に向かった。和也が証拠を一つ持っていたのなら、もっとあるはずだ。

工具箱の奥深くを探ると、モーターオイルと埃の黴臭い匂いが鼻をついた。指がまた油の染みた布切...

ログインして続きを読む