第7章

絵里視点

病院の廊下は、消毒液と絶望の匂いがした。私は美佳の体に囚われたまま、隆と一緒に、意識のない私自身の体へと急いでいた。

私の本当の体は、あの部屋に横たわっている。無防備で、なすすべもなく。

(お願い、無事でいて)私は念じた。(もう少しだけ、持ちこたえて)

病室のドアに近づいた時、窓から見えた光景に、私の血は凍りついた。

スクラブ姿の介護士が私の点滴スタンドのそばに立ち、震える手で注射器から透明な液体をチューブに押し込んでいた。その動きはあまりに性急で、必死さがにじみ出ている。握られた注射針が小刻みに揺れていた。

「しまった」と、声にならない声が漏れた。

頭の中...

ログインして続きを読む