第8章

絵里視点

目を開けると、そこには白い天井があった。本物の天井タイルだ。

「絵里? 目が覚めたのか?」

隆の声。温かくて、心配そうで、間違いなく本物の声。

指を動かそうとしてみる、かろうじて動いたが、それだけだった。

全身がトラックにでも轢かれたかのように重かったが、その疲労感の下には、ここ数週間感じることのなかった感覚があった。

これが、私の身体。その事実だけが、絶対的な真実としてそこにあった。

「隆?」声はかすれていた。

すぐに彼が身を乗り出してきて、その額にある傷跡が見えた。私を助けた時にできた傷。胸が締め付けられる。

「気分はどうだ?」

「最悪だけど……...

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