第110章

田中さんの従順そうな様子を、菅田有紀はちらりと蔑むように見やった。そうしてようやく、気位の高さを隠そうともしない顔で粥の器を抱え、キッチンを出ていく。

ちょうどその頃、藤原行船と藤原翔太の父子も2階から下りてきて、今しがた食卓についたところだった。

菅田有紀はふわりと甘い笑みを浮かべ、粥を藤原行船の前に置く。

「行船兄さん、お粥、少し熱いから……ゆっくり飲んでね」

だが、手を離した瞬間――。

「っ……」

と、小さく息を呑んだ。

藤原行船の心臓がひやりとする。

「どうした? 火傷したのか?」

すると菅田有紀の目に、さっと狼狽が走った。慌てて手を背中へ隠す。

「い、いいえ……...

ログインして続きを読む