第114章

「彩香」

藤原雅子が低い声でぴしゃりとたしなめた。

「身のこなしに気をつけなさい」

娘を制してから、藤原雅子はようやく店長のほうへ向き直る。口元には薄い笑みを浮かべながらも、目だけは冷えていた。

「あなた、新入りでしょう?」

図星だった。

この店の店長はつい最近交代したばかりで、前任者は3か月前に本部へ戻っている。

店長は一瞬ためらい、それから慎重に言葉を選んだ。

「お客様、少々お待ちくださいませ。すぐにVIPリストを確認いたします」

そう言って足早に離れていく。

すると藤原彩香が、母にこっそり親指を立てた。

「さすがお母さん。ひと目で新しい店長だって見抜くなんて」

...

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