第012章

鈴木知英は声のしたほうへ目をやる。案の定、男女が一組、肩を並べてこちらへ歩いてくるところだった。

男は仕立てのいいオーダースーツに身を包み、背は高く、整った顔立ち。落ち着いた気配をまとっている。

女は淡い色の、ゆったりとしたワンピース。細い体つきがいっそう際立ち、ふわりと浮世離れして見えた。まるでこの世の穢れを知らない少女のように。

鈴木知英は、いちばん頼りにしている身内に会えたかのようにぱっと表情を明るくした。

「行船、有紀! やっと来た!」

それから一気にまくし立てる。

「聞いてよ、さっきの菅田友香の態度、どれだけムカつくか!」

「菅田友香?」藤原行船が眉をひそめる。「あい...

ログインして続きを読む