第146章

「もちろん……」と菅田有紀が最後の一文字を口にしかけた、その瞬間。

「もちろん、違う」

藤原雅彦が淡々と言い切った。さらに振り返り、スマホに向かって短く指示する。

「木村さんをお通ししてくれ」

木村さん? 誰だ。宝石のブローチの件と関係があるのか。

ざわつく空気の中、仕立てのいいスーツを着た中年の男が、胸を張って展示ホールへ入ってきた。周囲を一瞥すると、迷いなく藤原雅彦のそばへ歩み寄り、深々と頭を下げる。

「藤原さん。ご依頼の品、持ってまいりました」

「……ああ」

藤原雅彦はそれだけ答えると、男を連れてテーブルへ向かった。

その姿を見て、ようやく男の正体に気づいた者が声を上...

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