第016章

藤原行船の声が、ふいにそこで途切れた。

一拍置いてから、彼は改めて問いかける。

「……友香は、まだ戻っていないのか?」

田中さんが強く頷く。

「はい。奥様は、まだお戻りではありません」

藤原行船は諦めたように手を振った。

「下がれ。翔太のほうは、おまえが気にするな」

田中さんは肩の荷が下りた様子で、足早に部屋を出ていく。

藤原行船はこめかみを押さえ、うんざりしたように額を軽く叩いた。重い体を引きずるように、書斎を出る。

それから三十分後。

なだめたり怒鳴ったり、ようやく息子をどうにか寝かしつけた頃には、藤原行船の疲労は倍増していた。喉はからからで、声を出すのも億劫だ。

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