第021章

また菅田友香のことか――。

そのせいで藤原行船は、昼間オークション会場で見た光景をふと思い出し、わけもなく胸の奥が重くなった。

有紀は体が弱い。もってあと一年ほどかもしれないと分かっていながら、それでも嫉妬して、どうしても蝶のブローチを奪おうとした。

そのうえ家出まで持ち出して、自分と息子を揺さぶるなんて……。

菅田友香、俺は本当におまえを見誤っていた。

そのとき、藤原行船の姿を見つけた田中さんが、まるで救いの神でも現れたかのように駆け寄ってきた。

「旦那様、ようやくお戻りになりましたか」

「坊ちゃんが奥様の作った蜜だれステーキじゃないと嫌だと騒いでおりまして……。私では、どう...

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