第034章

車はそのまま万卓ビルホテルへと乗りつけた。

ワンフロア丸ごと並ぶレストラン街を見上げながら、菅田友香がどの店なら藤原雅彦の格にふさわしいだろうと頭の中で品定めしていると、当の本人がふいに片手を上げ、一軒を指さした。

「あそこ、悪くなさそうだな。あそこにしよう」

菅田友香は目を凝らし、視線の奥に一瞬だけためらいが走る。

けれど、藤原陽向がぱっと顔を輝かせているのを見て、彼女は腹を括った。

「……うん。じゃあ、ここにしよう」

店に入るやいなや、店長が馴染みの笑顔で駆け寄ってくる。

「藤原家の奥様じゃないですか。さあさあ、こちらへどうぞ」

そして、ふと思い出したように首を傾げた。

...

ログインして続きを読む