第052章

翔太を今日迎えに行くと約束していたから、菅田有紀は時間になるやいなや手早く片づけ、さっと退勤の支度を整えた。

ところが出ようとした瞬間、丸一日仕事に追われていたはずの藤原行船がふいに現れ、「一緒に翔太を迎えに行く」と言い出した。

少し不思議には思ったものの、藤原行船と連れ立って出入りできるのは有紀にとってむしろ願ってもないことだ。胸の奥がふわりと弾む。

ほどなく二人は幼稚園に着いた。

だが翔太を引き取っても、行船はすぐに車を出そうとしない。運転席でじっと前を見据え、何か考え込んでいる様子だった。

翔太が「パパ?」と声をかけても、返ってくるのは要領を得ない返事ばかり。

その横顔を見...

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