第055章

都心――盛園。寸土寸金の一等地に建つ、大豪邸。

朝からぶっ通しで動き回り、ようやく一息つけた藤原雅彦は、目の前に並べられた五つ星ホテルのケータリングを見下ろした。けれど箸を伸ばす気にはなれない。

頭の中を占めているのは、昨日、菅田友香の家で口にした――あの味ばかりで。

気休めに野菜を一本だけつまみ、口に運ぶ。しゃく、と空虚な歯触り。

そのとき秘書が血相を変えて飛び込んできた。

「社長、まずいことになりました」

同じ頃、菅田友香は藤原陽向を迎えに幼稚園へ向かう支度をしていた。

靴を履き替えたところで、スマホが震える。清水奈々からの着信。

「友香、今どこ? 大丈夫?」

通話...

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