第061章

そのとき、警官のひとりがこちらを振り向いた。

「藤原さん、お話はつきましたか。示談でいかれますか、それとも――」

藤原行船は短く「いや」と返し、その先を遮った。

「示談はしない。徹底的に追及してもらう」

すると警官は一歩歩み寄り、懐からひやりと光る手錠を取り出した。

「では、申し訳ありませんが、ご同行願います」

菅田友香は、ついに顔色を変えた。

事情は、誰より自分がよく分かっている。

天城幸宏が睡眠薬を菅田有紀に売ろうとしなかったのは、自分のために腹を立ててくれたからだ。

けれど、この老人にはこれまで何度も助けられてきた。

これ以上、自分のせいで罪まで背負わせるわけにはい...

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