第084章

電話が繋がった瞬間、鈴木知英の切羽詰まった声が飛び込んできた。

「行船、大変! まずいことになった!」

「さっき有紀がどうしても退院するって聞かなくて、私が付き添って病院の正面玄関まで行ったの。車に乗ろうとしたところで、誰かに気づかれて……」

「いきなり人だかりに囲まれて、有紀に向かって腐った卵だのゴミだの投げつけてきたのよ!」

藤原行船の胸がひやりと冷えた。

「有紀は――有紀は無事なのか?」

「そこは何とか。病院の警備員さんたちが駆けつけてくれて、囲みを解いてくれたの。それで今は、有紀を連れて入院棟に戻ってきたところ」

鈴木知英の声には、悔しさと自責が滲んでいた。

「でも、...

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