第4章

「アンナは……?」と、私はどもりながら、白く立ちのぼる湯気の向こうへ一歩踏み出した。

 母は処置室のほうを振り返った。手術椅子は黒ずんだ泥のようなものでびしょ濡れだった。アンナは影の中でぴくりとも動かず、胸は無残に潰れ落ちている。

「脆い宿主ね」母は呟いた。棚から黒い遺体袋を引っ掴み、血を流し続ける死体へ放り投げる。

 医者じゃない。屠殺者だ。

 地下三階の工業用焼却炉が、二千度の炎で轟音を上げていた。

 私は空のホルマリン用ドラム缶の山の陰に身を潜め、震える手を抑えるように冷たい金属の縁を握りしめた。

 母は開いた炉の真正面に立っていた。分厚く黒い加圧式の遺体袋を炎へ押し込もう...

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