第3章
あの写真は知っていた。私は最後の、生きていた夜を、それを見つめて過ごしたのだから。
一度目の人生では、誰が裏で糸を引いているのか突き止める前に、投稿は拡散してしまった。朝になれば、学科のあらゆるグループチャットにスクリーンショットが回っていた。週末には、話したこともない連中までが私の身体について勝手な意見を垂れていた。
金曜日、沢田は私を自分の研究室――いや、執務室に呼び出した。ドアを閉めろと言い、向かいに座って両手を組む。まるで学校のカウンセラーが、できるだけ優しく悪い知らせを告げようとする時みたいに。
「これは誰にとっても良くない、凛。君にとっても、研究室にとってもだ。学部長とは話をつけてある。君が自分から論文を下げるなら、審査そのものを取り下げられる。記録はきれいなまま。来年、やり直せる」
「私は何もしていません」私は言った。
「あなたは分かってるはずでしょう」
彼の顔から温度がすっと消えた。誰かがスイッチを切り替えたみたいに。
「私が知っていることと、人が信じることは別物だ。公聴会に持ち込めば、奴らは全部掘り返す――君の研究室への出入り、メール、私たちが密室で会ったことのあるあらゆる面談の記録までな。二人とも顕微鏡の下だ」彼は身を乗り出した。
「本当にそれを望むのか、よく考えろ」
私は取り下げなかった。だから、向こうが私を取り下げた。学内審査。停学。研究室のカードキーは、火曜日の朝に突然使えなくなった。
その週末、両親が車で来た。駐車場を出る前に、父の手が私の頬を打った。母は車の中に座ったまま、「佳樹なら、こんなことにはならなかった」と言った。
説明しようとした。けれど、聞く気なんてなかった。彼らが欲しかったのは、『良い娘』という型に収まる私で、その私なら、学内スキャンダルに名前が載るはずがない――ただそれだけだった。
私は外に出るのをやめた。まともな食事をやめた。誰からの電話も取らなくなった。だって、誰も私の心配なんてしていなかった。かかってくるのは、「本当なの?」と確かめるための電話ばかりだったから。
カウンセリングなんて受けられなかった。食料品を買うのだって、やっとだった。
諦めた夜、私はむき出しのマットレスの上で横になっていた。ひび割れた画面の携帯電話と、それ以外には何もない。私は治也の写真を、最後にもう一度開いた。暗くて、ぼやけた画像。変わらない肩のライン。変わらないシルエット。
けれどその夜――もう何もかもどうでもいい、と決めたその夜――私は画面を拡大し、ざらつきの向こう側を見た。百回見落としてきたものが、そこにあった。女の左耳の後ろに、小さな点が五つ。
玲奈が髪を留めるたび、指先でその点をなぞるのを私は見ていた。月曜。水曜。金曜。同じ鏡。いつも同じ仕草。
双子座。
彼女のタトゥー。彼女の秘密。私が全部をかぶって落ちていく間も、白日の下に座っていたもの。
私は知ったまま死んだ。そして、それを伝える相手はもう誰も残っていなかった。
玲奈の指が治也の手首をきゅっと掴んだ。
「もう、いい」玲奈の声は硬く脆くなっていた。
「治也、言いすぎよ。凛――私は信じてる。私に任せて。これ以上――」
治也は彼女の手を振りほどいた。もう乗ってしまっていたのだ――胸を張り、顎を上げ、注目を燃料にして。
「本人が否定できないんだぜ。証拠はここ、俺のスマホにある」彼はさらに高く掲げた。
「近くで見たい奴、いる?」
後ろの方で誰かが拍手した。聞き覚えのない声が叫ぶ。「やっと誰かが言ったな」
振り向く頭が増える。腕を組む人間が増える。誰かが崩れていくのを見る時の、あの斜に構えた、値踏みする視線――心配ではなく、好奇心だけ。
私は以前も、まさにこの場所に立っていた。違う人生。けれど同じ観客。
治也が一歩近づく。
「で? まだ何かあるのか、それとも終わりか?」
こいつは私が折れるのを待っている。引き下がって、俯いて、肩をすぼめて去るのを。前と同じ結末を。
私は自分のスマホを取り出した。
「もしもし――教授のことで通報したいんです」声を通るように、わざと張った。群衆の中のあちこちでスマホが私に向けられていて、全員に拾わせたかった。
「その教授は、うちの研究室の学生と関係を持っています。私の作業スペースに物的証拠があり、写真を持った目撃者も、いま目の前にいます」
私は治也をまっすぐ見た。
「神崎凛です。グレイモント・ホールの外にいます。誰かを向かわせてください。お願いします」
私は通話を切り、続けて学内警備に電話をかけた。
治也の顔から、にやけた笑みがすっと消えた。
