第5章

 沢田は十二分後に現れた。顔を見るより先に、彼のアフターシェーブの匂いが鼻に入ってきた。

 学科長の秘書を連れていた。ぺたんこの靴を履いた神経質そうな女で、群衆にちらちら視線を飛ばしながら、まるで何人がカメラ付きのスマホを持っているか計算しているみたいだった。答えは、全員だ。

 沢田はまず警官と握手し、続いて不正行為の調査担当者とも握手した。温かい笑み。しっかりした握り。二十年かけて「危機の真ん中に入り込み、それを誤解みたいに見せる歩き方」を身につけてきた男の姿勢だった。

「私は彼女らの指導教員です。状況は把握しています。これは学科内の案件です――言葉尻を取られる前に、こちらで解決する...

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