第145章

岩崎奈緒の足首は治りが早かったが、藤原光司の手のひらは直接貫かれており、数日で治るようなものではなかった。

右手を負傷しているため、薬を塗り替える際には古い包帯をハサミで切らなければならない。藤原光司は何度かハサミを動かしてみたが、小さな切れ込みを一つ入れただけだった。

今夜バーにいた間、藤原光司はこの手をほとんど見せておらず、温水聡ですら彼が怪我をしていることを知らなかった。

岩崎奈緒は少し立ち止まった後、彼の方へ歩み寄り、その手からハサミを受け取った。

藤原光司ははっとし、一瞬彼女を見上げたが、すぐに視線を逸らした。

岩崎奈緒は彼を見ず、ただ傷口に集中していた。

包帯を切り開...

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