第149章

岩崎奈緒の意識は混濁していたが、痛みと、絶えず走り続ける車の感覚だけははっきりと分かった。

車内にはガソリンの匂いが充満しており、その不快さに吐き気を催した。

男の声が耳元でまとわりつき、その手が自分の体を這い回るのさえ感じる。

車はまだ止まっておらず、男もそれ以上のことはできずにいた。

やがて車は、とある廃工場でエンジンを止めた。都心からそう遠くはないが、最近取り壊しが進められているエリアで、夜は人っ子一人おらず、ただ冷たい重機が大通りの脇に停まっているだけだった。

地面に放り出された岩崎奈緒が、朦朧としながら目を開けると、目の前には痩せた男と太った男が一人ずつ立っており、その視...

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