第304章

彼女は振り返り、藤原光司に一言告げた。

「光司、じゃあ、先に行ってるわね」

藤原光司は頷くと、笠木楓のいる場所へと歩き出した。

笠木楓は笠木家の跡継ぎで、笠木家は代々武器製造の才人を輩出し、上層部の直属である、紛れもない名門だ。

笠木楓本人は陰鬱で気性が荒く、まともに話せる友人は少ないが、藤原光司と温水聡はちょうどその友人の中に含まれていた。

藤原光司が彼の隣に腰を下ろすと、笠木楓は冷笑を漏らした。

「あの女のどこがいいのか、さっぱり分からん」

温水聡が慌てて肘で笠木楓をつついた。

「なんだその言い方は。誰もが君みたいに、どんな女にも興味がないと思ってるのか?光司は昔から萩原...

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