第305章

岩崎奈緒は今回、着替えをほとんど持ってきていなかった。今はずぶ濡れで、後で着る服すらない。

かっとなって岸へ向かって泳ごうとしたが、森野昇がその腰をぐっと掴んで引き戻した。

「ペニー、俺がお前を抱き寄せてこなければ、萩原家のあの姉妹がお前を見逃すと思うか?さっき、二人はセレブのグループチャットでお前の悪口を散々言ってたぞ」

もっとも、それは藤原光司の妻についてのことだったが。

岩崎奈緒は全身をこわばらせ、目を細めて彼を見た。

「だとしても、本当に私を突き落とす必要はなかったでしょう」

森野昇が彼女を突き落としたのには下心があった。彼女のずぶ濡れ姿を見たかったのだ。

明らかに、そ...

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