第315章

岩崎奈緒は呆然とし、一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。

家のことだろうか?それとも萩原彩花の件だろうか?

彼女の視線は萩原初へと注がれた。今、わざわざ萩原初を連れてきているところを見ると、どうやら萩原彩花の件のようだ。

「藤原社長、私に考えはありません。萩原彩花さんはもう謝罪されましたし、道理を得たからといって許さないわけにもいきません。それに、萩原彩花さんも確かに被害者ですから」

言い終わるか終わらないかのうちに、藤原光司の纏う空気がずしりと重くなったのを感じた。

「それ以外は」

彼は冷たく彼女を見つめる。「ないのか?」

彼の威圧感はあまりにも強く、岩崎奈緒は息が詰...

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