第316章

松岡和人などという男と同一視されたかと思うと、藤原光司は腹の底から怒りがこみ上げてきた。

彼はゆったりとした動作で傍らのティッシュを取り、手のひらの血を拭い去る。

「一晩中会議で、少し疲れていてな」

温水聡はくすりと笑った。「昨夜は早くから会議だったと俺も聞きましたよ。会社はそんなにお忙しいのですか?いくら腹が立っても、ご自分の体を粗末にしてはいけませんよ」

「次からは気をつけよう」

藤原光司は理性を取リ戻し、立ち上がって傍らへ移動すると、笠木楓に電話をかけた。

笠木楓は一階にはいなかった。

「光司」

「笠木楓、昨夜の俺の痕跡をすべて消せ」

笠木楓は一瞬戸惑った。いったい何...

ログインして続きを読む