第330章

目の前のドアが開き、ちょうど病室から出ようとしていた萩原初は、彼の手にある花を見て、嬉しそうに受け取った。

「光司!」

彼女は顔を近づけて花の香りを嗅ぐと、すぐに萩原彩花に花瓶を探してくるよう言いつけた。

萩原彩花は藤原光司が花を贈ったのを見て、嫉妬心が湧いたが、そんな素振りは微塵も見せず、急いで花瓶を調達してきてバラを挿した。

藤原光司は来る途中、通りかかった花屋で買っただけで、特に心を込めたわけではない。ただ手ぶらで来るのを避けたかっただけだ。

「体調は良くなったか」

骨折や筋の損傷は完治に百日かかると言う。萩原初はしばらく病院でしっかり療養する必要があるだろう。

とはいえ...

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