第360章

松岡和人の手には、ポケットティッシュと病院の貸し出し用と思われるビニール傘が握られていた。

彼は足早に岩崎奈緒のそばへ駆け寄り、傘を差し出し、ティッシュを彼女の目の前に差し出した。

「ペニー、何か嫌なことでもあったのか」

その声に岩崎奈緒は少し驚き、顔を上げて彼を見ると、慌てて涙を拭い、無理に笑顔を作った。

「松岡和人、どうしてここに」

「妹の薬を取りに来たんだ。知ってるだろ、妹の足が悪いから」

彼は傘を差したまま、隣に腰を下ろした。

「こんなに日差しが強いと、この椅子も熱くなってるはずだ。よく座ってられるな。何かあったのか」

岩崎奈緒は、自分は松岡和人とそれほど親しいわけで...

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