第368章

岩崎奈緒は森野昇の隣に腰を下ろした。森野昇が彼女のために空けておいたその席は、藤原光司のすぐ隣だった。

明らかに、森野昇はわざと事を荒立てようとしている。

先ほど向かいの個室にいた時、林田雅は彼女に何度か視線を向けた。その育ちの良さからか、言葉で皮肉を言うことはなかったが、彼女を快く思っていない態度は明らかだった。

向こうの席は早々にお開きになったというのに、まさか森野昇がこんな形で二次会を仕掛けてくるとは。

森野昇は場を盛り上げるのが得意で、席はたちまち賑やかになった。そして彼は話題をプライムへと巧みに誘導した。

今夜の宝科の会食は、もともと藤原光司に感謝を示すためのものだ。だか...

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