第401章

笠木楓はこうした光景に興味がないらしく、彼女の横を素通りし、そばの個室のドアを開けて入っていった。

岩崎奈緒は我ながら感心する。この期に及んで、まだ平然と床に落ちた物を拾うふりができるのだから。

温水聡が屈んで手伝おうとしたが、藤原光司の冷たい声が聞こえた。

「聡、先に入ってろ」

温水聡は眉を上げ、人の不幸を喜ぶように言った。

「おやおや、誰かさんがひどい目に遭いそうだね」

岩崎奈緒は頭のてっぺんから血の気が引くのを感じ、心の中で谷口優奈を呪った。

温水聡が去ると、その場には藤原光司と岩崎奈緒の二人だけが残された。

ちょうど小さなおもちゃの一つが藤原光司の足元に転がり、岩崎奈...

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