第5章

 陽菜はその場に凍りついた。

 彼女の唇が、抑えられずに震えて、声は小刻みに震えている。

「渡……私……わざとじゃ……」

「答えろ」

 山崎渡の声は、霜のように冷たかった。

「あの晩、バーで――本当に静留がお前を突き飛ばしたのか?」

 陽菜は唇を噛み締め、頬に涙を伝わせる。

「……ただ、あの人が私のこと嫌いだって……渡が騙されるのが怖くて……」

「じゃあ、自分で自分に酒をかけたってことか?」

 山崎渡は彼女を凝視した。その瞳から優しさは完全に消え失せ、代わりに浮かんでいたのは疎外感と嫌悪だけだった。

 彼はそれほど愚かではない。

 衝動が冷め、いわゆる「心の痛み」とやら...

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