第5章
陽菜はその場に凍りついた。
彼女の唇が、抑えられずに震えて、声は小刻みに震えている。
「渡……私……わざとじゃ……」
「答えろ」
山崎渡の声は、霜のように冷たかった。
「あの晩、バーで――本当に静留がお前を突き飛ばしたのか?」
陽菜は唇を噛み締め、頬に涙を伝わせる。
「……ただ、あの人が私のこと嫌いだって……渡が騙されるのが怖くて……」
「じゃあ、自分で自分に酒をかけたってことか?」
山崎渡は彼女を凝視した。その瞳から優しさは完全に消え失せ、代わりに浮かんでいたのは疎外感と嫌悪だけだった。
彼はそれほど愚かではない。
衝動が冷め、いわゆる「心の痛み」とやら...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
縮小
拡大
