第105章

個室の空気が、その瞬間、ぴたりと止まった気がした。

笠原灯が篠原霧音の隣に腰を下ろす。もともと静かな個室は、彼らが入り込んだ途端、さらに重く沈黙した。

灯の身には、かすかな薬の匂いが残っている。そこに冷たい香水の香りが混じり、つんと霧音の鼻先を刺した。

清水恵は脇に立ったまま、顔色を青白くしている。スカートの裾をぎゅっと握りしめ、瞳の奥に悔しさがちらりと走った。

「灯、こういうの……よくないんじゃない? 篠原霧音さんとこちらの方、明らかにお話があるみたいだし」

声は低く、気遣いに満ちた響き。けれど、その目はまるで別のことを言っていた。

笠原灯は振り向きもしない。何でもないことのよ...

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