第11章

椅子の脚が床を擦り、きぃ、と耳を刺す音を立てた。

篠原霧音は勢いよく立ち上がる。脇に下げた手が、怒りのあまりわずかに震えていた。

「笠原社長が私の顔を見たくないなら、帰ります」

そう言い捨て、卓上のノートパソコンをひっ掴むと、踵を返して歩き出す。

背筋だけは、最後までまっすぐ。頭なんて、下げてやるものか。

会議室の扉を閉め、外の探るような視線と嘲りを遮った瞬間、篠原霧音は糸の切れた人形みたいに力が抜けた。ふらりと足がもつれ、トイレへ向かう。

心臓を、誰かに乱暴に握り潰されたみたいだった。酸っぱくて、苦くて、胸の奥がざらざらする。

鏡に映る自分は、顔色が紙みたいに白い。目の縁は赤...

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