第110章

篠原霧音は、木下春実の「絶対に手に入れる」とでも言いたげな顔を見た瞬間、胸の奥に嫌な予感がすっと立ち上がった。

この家族が揃うとき、ろくなことが起きた試しがない。

「私は、あなたたちを彼に会わせたりしない」

霧音がきっぱり言い切ると、篠原雄が鼻で笑い、キセルをコンコンと灰皿に当てた。

「お前が案内しなくても、こっちで調べりゃいいだろ。笠原グループなんて、知らねえ奴のほうが少ない。康人、明日の朝イチで行くぞ。お義兄さんのところにな」

「へいへい、親父」篠原康人がへらっと笑う。「そのときはお義兄さんに、管理職でも用意してもらおうぜ。俺も一回くらい“偉い人”ってやつを味わってみてえし」

...

ログインして続きを読む