第111章

篠原霧音はバッグを引っ掴むと、振り返りもせず玄関へ向かった。

二歩も行かないうちに、腕を乱暴に引き止められる。

木下春実がバッグのストラップを掴み、声をつり上げた。

「どこ行く気!? ホテルに泊まる? あんた、あそこ一泊いくらすると思ってんの!」

「離して」

「離すわけないでしょ! この浪費女!」木下春実は両手でしがみついたまま放さない。「リビングのソファ、こんなにでかいんだから、適当に布団でも丸めて一晩くらい我慢しなさいよ! ホテル代を浮かせて、弟にまともな服を二着でも買ってやれないの!?」

篠原康人はソファにだらりと寝そべり、足を組んでぷらぷら揺らす。

「姉ちゃん、義母さん...

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