第113章

篠原霧音は立ち上がると、テーブルの上の茶碗と皿を手際よく重ね、抱えてそのまま台所へ入った。

蛇口をひねる。ざあっと流れる水が、皿の表面を洗い流していく。

霧音は無意識のまま洗剤を絞り、スポンジでごしごしと擦った。

背後から、落ち着いた足音。

笠原灯が入ってきた。

ただでさえ狭い台所が、いっそう息苦しくなる。

灯は入ってくるなり、シャツの袖をさっとまくり上げ、引き締まった前腕を覗かせた。そして当然のようにシンクの前へ立つ。

霧音が泡をつけ終えた皿を手に取り、水の下で丁寧にすすいだ。

肩を並べて立っているのに、どちらも何も言わない。

霧音の手が止まった。

蛇口を閉め、隣の男を...

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