第116章

篠原霧音が席に着き、椅子を引いて腰を下ろした。まだ数分も経たないうちに――。

曽我美蘭がマグカップを手に、彼女のデスクの縁にもたれかかった。口元には、明らかに悪意の混じった笑み。

「篠原霧音、まだ座ってるんだ? 今日は家の用事、片づかなかったの?」

霧音はキーボードを叩く手を止める。顔も上げないまま、短く言った。

「用があるなら、要件だけ」

曽我美蘭はわざと爪でマグカップをコツコツ叩き、周りに聞こえるよう声を張り上げる。

「あなたの両親がね、1階ロビーで大騒ぎしてるの。警備員でも止められないって。さっき人事から内線が来たわよ。今すぐ降りて、さっさと連れて帰れって。会社のイメージに...

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