第119章

篠原霧音はドアに背を預けたまま、ずるずると身体が滑り落ち、ひんやりした床に座り込んだ。

両腕で膝を抱え、顔を腕の中へ埋める。

古川司真から渡された北米支社の計画書は、バッグの中に入っている。

今この瞬間、それがはっきりと輪郭を持って迫ってきた。

ここを出る。

北米へ行く。

その考えが、これまでになく鮮明だった。

どれほど時間が経ったのか。廊下の向こうで、ふいに気配が動く。木下春実の声だ。

媚びるように甘ったるく言う。

「灯、お仕事から帰ってきたの?」

「疲れてない? 霧音の子、今日まだご飯作ってなくてねえ。今すぐ呼び出して作らせるから、いい?」

そう言いながら、木下春実...

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