第132章

篠原霧音はリビングのソファに腰を下ろし、届いたばかりの宅配便を手にしていた。

書類用の封筒から、するりと一枚の紙が滑り落ちる。――財産分与の合意書。

最後のページをめくると、男方署名欄にある「笠原灯」の文字が、紙に食い込むほど強く書かれていた。最後の一画など、勢い余って紙を裂いている。

霧音は、その裂け目を数秒見つめた。

……サインしたんだ。

揉めることもない。駆け引きもない。

背もたれに身を預け、長く濁った息を吐く。

胸の上に何日も居座っていた石が、ふっと横にどけられたみたいだった。

笠原灯が、ついに離婚に同意した。

そのとき、テーブルのスマホがぶる、と震えた。

画面に...

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