第134章

篠原霧音は古川司真のオフィスを出ると、そのまま裁判所の正門へ向かった。

正午12時まで待った。人の流れはだんだん薄くなっていくのに、笠原灯だけが現れない。

霧音は階段の上に立ち、指先で身分証をきゅっと握りしめる。

スマホの画面を一度だけ確認した。

約束の時間から、もう3、4時間は過ぎている。

それでも、笠原灯は来ない。

霧音は焦らなかった。

この10年、彼を待つことには慣れすぎるほど慣れていたから。

夕飯に帰ってくるのを待ち、出張から戻るのを待ち、清水月の隣から「時間」を分けてもらえるのを待った。

――そしてこれが、最後の「待つ」だ。

そのとき、黒いマイバッハが路肩に静か...

ログインして続きを読む