第138章

定時を過ぎたころ、古川司真が篠原霧音のデスク脇まで来て、コンコンと天板を叩いた。

「もうすぐ海外だろ。荷造り、どこまで進んだ?」

キーボードを叩いていた手が止まり、霧音は顔を上げて古川を見た。……二秒ほど、固まる。

このところ彼女は引き継ぎと、海外市場の資料の読み込みで手一杯だった。スーツケースすら引っ張り出していない。

古川がふっと笑い、どこか呆れたように肩をすくめる。

「やっぱりな。俺も着替えが足りないし、ちょうどいい。行こう、一緒に買いに」

霧音は断ろうとしたが、確かにフォーマルの場で着られるスーツが数着足りない。小さくうなずいて、手早く片づけた。

二人が向かったのは、都...

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