第141章

清水恵は、その場で固まった。

篠原霧音が怒り出して、ドアを叩きつけて出ていくとか。あるいは笠原灯の薄情さを泣きながら責め立てるとか。

そういう展開を、清水恵は疑いもしなかった。

――なのに。

篠原霧音は、ふわりとした調子で「いいよ」と頷いた。

驚きが清水恵の顔に浮かんだのは、ほんの一瞬だけ。

すぐに表情を整えると、彼女は甘えるように笠原灯の腕へ絡みつき、そのまま男の胸へ身を寄せた。

「よかったぁ」

清水恵はやわらかな声で言い、手のひらで笠原灯の胸元をなぞって、スーツの皺をそっと撫でのばす。

「灯がいてくれるだけでも心強いのに、霧音さんまで見てくれるなんて。これでやっと安心で...

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