第144章

笠原灯と清水恵の結婚式準備は、まさにお祭り騒ぎだった。笠原グループの社長が結婚する――そんな大ニュースは、半分どころか街じゅうに知れ渡っている。もちろん、その火付け役のひとりが清水恵であることは言うまでもない。自分で話題を作り、自分で広げる。彼女はそういう女だ。

篠原霧音は、そんなことに目もくれなかった。

最近の彼女は忙しい。息つく暇もないほどに。

ビザ、航空券、新居の賃貸契約書。ひとつひとつを表に出さず、けれど確実に、淡々と前へ進めていく。

海外へ行くことを話したのは、江口青だけだった。

『本当に、周りに何も言わなくていいの?』

電話口の江口青が、少し迷うように言った。

「言...

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