第147章

篠原霧音の心臓が、どくんと跳ねた。けれど顔には、何ひとつ出さない。

彼女は半歩だけ身を引き、ドア枠にもたれて苛立った声を作る。

「この部屋、もともと私が使ってたんだけど。まだ私の物、いっぱい残ってるの。取りに来ただけでしょ? 何か悪い?」

そう言いながら、ドレッサーの脇に置かれていたヘアピンを、何気ない手つきで摘まみ上げた。

それは確かに、昔の彼女の物だった。ただ、回収されないまま残っていただけ。

木下春実の視線が、霧音の顔からヘアピンへ滑り、さらにその奥――部屋の中へと一度だけ走る。

霧音は見せる隙を与えない。体を斜めにして春実の横をすり抜け、廊下へ出た。

たった二歩。神経は...

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