第149章

篠原霧音が席に着いてまだ間もない。デスクの上に「バンッ」と音を立てて、青い表紙のファイルが投げつけられた。

曽我美蘭が机の脇に立ち、腕を組んだまま見下ろしてくる。

「この書類、笠原グループが急かしてるの。あんたが行って届けてきて」

顎をわずかに上げた口調には、有無を言わせない圧があった。

篠原霧音は動きを止め、ファイルへ視線を落とす。

表紙には、笠原グループのロゴ。

江城で多少なり噂に耳を傾ける人間なら誰でも知っている。篠原霧音が笠原灯と離婚して、まだ日が浅いことを。

まして同じ商圏で立ち回っている曽我美蘭が知らないはずがない。

――わざとだ。

笠原グループへ行かせて、恥を...

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