第150章

篠原霧音は眉をひそめた。笠原灯の秘書の連絡先なら、たしかに入っている。

――だが、かけたくない。

この番号に発信した瞬間、笠原灯の耳に入るのは目に見えていた。

今日ここへ来たのは書類の受け渡しのため。いちばん会いたくない相手が、よりにもよって笠原灯だ。

篠原霧音がスマホを握ったまま動かないのを見て、受付の女の嘲りはさらに露骨になった。

「どうしたの? つながらない? それとも、そもそも番号なんてないの?」

女は鼻で笑い、手首を勢いよく振り上げる。

次の瞬間、青い表紙のファイルが床へ叩きつけられた。

ばさっ、と表紙が弾け、挟まれていた十数枚のA4が一気に散らばる。

周囲の見物...

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