第153章 清水恵の憂い

笠原灯は否定しなかった。

椅子から立ち上がると、デスクを回り込む。

「笠原グループの営業機密を聞いた以上、決まりとして秘密保持契約にサインしてもらう」篠原霧音の目の前で足を止める。「条項が多い。起案するだけで最低1時間はかかる。その1時間、お前はどこにも行けない」

篠原霧音は、笠原灯のふてぶてしい顔を見上げ、むかむかと腹が立った。

「笠原灯、頭おかしいんじゃない?」

笠原灯は彼女を見下ろし、口元に薄い弧を描く。

「安心しろ。契約書ができるまで、昼飯でも食ってろ。たぶん、もうすぐ届く」

篠原霧音が一瞬、目を瞬かせた。

そのとき、廊下から足音が近づき、続けて弁当箱が触れ合うかすか...

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