第155章 篠原康人が騒動を起こす

法務部の人間が来るのは早かった。条項のはっきりした秘密保持契約書を一通、持ってくる。

篠原霧音は受け取ってざっと目を通すと、余計なことは一切聞かず、ペンを取ってそのまま署名した。

ペン先が紙を走る音まで、やけに乾いている。――一秒だって長居したくない、と言わんばかりに。

書き終えると契約書をすっと押し返し、バッグを掴んで立ち上がった。

そのとき、スマホが鳴った。

篠原霧音の足が止まる。バッグの中からスマホを取り出すと、画面には見知らぬ番号。市内の表示。

一瞬だけ迷ってから、通話に出た。

「篠原霧音さんでいらっしゃいますか」

相手は硬い声だった。事務的というより、どこか改まって...

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