第158章 通報して金を追う

篠原霧音はその場に立ち尽くしたまま、こめかみがどくどくと脈打つのを感じていた。

四千万円以上。

頭の中でその数字を何度も転がしてみるほど、馬鹿げていて現実味が薄れていく。

木下春実と篠原雄が、節約に節約を重ねて半生かけて守ってきたもの。立ち退きで手に入れたあの部屋は、二人にとって一番高い財産だった。そこに銀行の預金まで上乗せして――全部、この役立たずが一息で火の中へ投げ込んだ。

よりにもよって、今。

霧音はバッグのストラップをぎゅっと握り、指先が白くなる。

彼女はもうすぐ出ていく。

仕事の引き継ぎも、奈々の学校も、海外へ出る手続きも。ひとつずつ片づけて、きれいに整えてきた。

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